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チョコレートは甘過ぎる。 
チョコレートは甘過ぎる。我儘に振舞う娘のようであり、派手で官能的で下品ななキャバレーの踊り子のようでもある。
砂糖約30g、角砂糖に換算したら四つ分の暴力は、まだ口の中に残って邪智暴虐のかぎりを尽くしている。
なぜこのようなものを口にしてしまったのか、どうしてそれを未然に、完全なる注意を持って阻止できなかったかは、今この瞬間において最も悔やまれる出来事だった。
それというのも、駅で配られた試供品をうっかり食べてしまったのが悪かった。しかし、食べてしまうだけの理由もある。新宿駅の東口で配られていたそれは、きらきらとした素材の無地の包み紙にはいっていて、太陽に透かすと七色に煌めいた。開けてみると、半透明のつるっとした魚の形をした小粒の物体が出てきて、飴ともグミともつかない硬さなのにもかかわらず半透明をしていたことと、あまりに外見が淡白だったため、その物体が食べ物だと言うことしか推測できなかった。おまけに匂いもしなかった。まぁ食べてみても害はないだろうと思い、口にいれたところ、それがチョコレートだったのだ。
なんでも、大手の製菓会社が新しい技術を開発したとかで、今までまさにカカオ製品の外見をしていたチョコレートの既成概念を打ち砕く商品として、カラフルな半透明のチョコレートを新発売したというニュースを数日前に見たばかりだった。半透明なんて、ただのプラスチックじゃん、子供が間違えて食べたらどうすんだろ、などという皮肉を、同棲している年上の相方と交わしたのに。なんて自分はうっかりしているのだろう。
そもそも、今日のお洋服がいけなかったのかもしれない。Emily temple cuteのチョコレートプリントのティアードワンピースにレースのタイツ、Vivienne Westwoodのロッキンホースバレリーナに、秋らしくベージュのベレー帽を合わせていた。チョコレートが嫌いなのにチョコレート柄を着るなんて、と思われても仕方が無いが、お洋服に罪はないし、それを選んだのは自分だ。あえて言うならば、何人かの道行く人に指をさされたことが心を苛立たせていた。
ロリータを着ている人間は、他人から「それ、ロリータファッションでしょ」などと言われることは好まない。他人からの不躾な評価も好まない。自分が好きでそれを選んでそれを着ていて全身にこだわりがあって手を抜いている箇所なんて一つもないからだ。可愛いお洋服を着て初めて、私は私のメンタリティを完成させることが出来る。
貴方達の、ユニクロの2990円のジーパンや古着屋で買ったであろう生地の薄いTシャツ、夏の売れ残りのくしゃくしゃしたワンピースとは違うのよ。そんなことを独りごちて、不機嫌さに任せてすれ違う人間の服装をばっさばっさと切り倒していった。
不意に、ピロロロと聴きなれない音で携帯が鳴った。iphoneの緊急地震速報だ。
震源予想は東京都下とある。これは大きいかもしれない。上を見上げると東京タワーがあった。もし、本当に大きい地震が来たら倒れてくるかもしれない。展望台のガラスが割れて落ちてくるかも。そう思い、ロリータに似つかわしくないが、命の方が大事だ、と、でもプライドは捨てずに出来るだけおしとやかに走った。走って増上寺の方まで逃げた。あそこなら広いし、安全だろう。
しかし、一向に揺れは起こらなかった。あんなに必死になって逃げたのに、体力の無駄だった、っていうか必死すぎて恥ずかしいじゃない。そんなことを考えてちょっとアヒル口になりながら、走って弾んだ息を整えていた。空が曇っている。嫌な天気だ。
浜松町駅に向かって歩き始めたところで、今度は雨が降ってきた。いきなり大粒の雨である。しかも、大量に。季節外れのゲリラ豪雨なんて、今日は運が悪すぎる。お洋服が濡れたら困る。大事なことなので二度言うが、今日は運が悪すぎる。最悪だ。口をおもいっきりへの字に曲げ、雨宿りできそうな軒先を探して走ったが、ロッキンホースバレリーナではどうにも走りにくい。足元を見て驚いた。雨ではなかった。雹だった。
もっと言うと、雹ではなかった。第一に、丸くない。第二に、半透明で赤くて小さいものがついている。ひとつ、拾い上げてみると、それは見覚えのある容器だった。さかなの形のプラスチックで、口のところに赤いキャップがついている。醤油やソースを入れてお弁当に入れておくあの容器。今、大量に空から降ってきているのは、雨でも雹でもなく、魚型の醤油入れなのだ。
なんで、どうして空からこんなものが降っているのか、雨や雪以外の物が降ってくることは気象学的に有り得るのかという不可解な気持ちもあったが、なんとなくこの場面に出くわしたことがあるような気がして、それはいつだったかと思いだそうとして、空から容器が降ってくるのもかまわず、しばしその場に立ち尽くしていた。ふと、通りを歩いている人たちをみると、いつものゲリラ豪雨のように慌ててコンビニに駆け込んだり、折りたたみ傘を開いたりしている。何が降っているのか、そのことに興味を抱く様子もない。他の人には見えていないのか、それとも気にする余裕もなく、急いて生きているのか。
ビルとビルの間の、普段は絶対に人間の視界に入らないような隙間から、三毛猫が悠々と歩いて出てくるのが見えた。ゲリラ豪雨、この場合は容器が降ってきているのでゲリラ容器、というのが正しいのだが、とにかくこの悪天候の中で、何一つ意に介さず、こちらへ向かって歩いて来ていた。
猫と目が合った。その瞬間猫は尻尾をぴんと立て、こちらへ向かって、確かにこう言った。
「君が一日に7時間以上寝続ける限り、デジャブは起こり続けるんだよ。」
全く、意味が理解できなかった。
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